テレワークの必要性と採用不調に悩む人事課長のフラッグ
・『ザ・ベストフラッグ』店主 黒縁眼鏡のWebコンサルタント
・『ザ・ベストフラッグ』看板フラッグ犬
・今回の悩める企業人
・会社の現キーマンと社員のみなさん
*このブログのお話は創作です。
ここは、悩める経営者だけに見える店『ザ・ベストフラッグ』。
人知れず、中小企業経営者・役職者に悩み解決のヒントを手渡している、秘密のブログです。
偶然立ち寄ったあなたを待ち受けるのは、業務効率改善か求人数増加かそれとも…
店主のもとには、色とりどりのミッションフラッグが用意されています。
どのフラッグを手渡されるかは、それぞれの企業人の悩みしだい。
どうやら、今日のフラッグにはこう書いてあるようです。
「 独自のテレワークを進めて採用強化すべし 」
フラッグを手渡された人は、このミッションを遂行しなければなりません。
しかし、その前にテレワークとは何か?、そしてテレワークのメリット・デメリットをおさらいしておきましょう。
テレワークとは「情報通信技術(ICT=Information and Communication Technology)を活用した時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」のこと。Tele(離れて)とWork(仕事)を組み合わせた造語です。要するに本拠地のオフィスから離れた場所で、ICTを使って仕事をすることです。
https://telework.mhlw.go.jp/telework/about/
■テレワークのメリット
・通勤時間やコストを削減できる
・家事や育児、介護などとの両立がしやすくなる
・働き方改革を推進し、通勤可能範囲外の人材も集めることができる
■テレワークのデメリット
・勤怠管理がしにくくなる
・情報漏洩のリスクが上がる
・社員間のコミュニケーションが不足したり新人育成の機会が損なわれたりする
『ザ・ベストフラッグ』の店主は、テレワークを漫然と実施するのではなく、自社の目的を達成するためにアレンジを加えながら推進するのがベストだと考えているようですね。
今もべスフラ店内で、店主はこんなことをつぶやいています。
やみくもにテレワークを進めてしまうと、上司や先輩とのコミュニケーション不足から新入社員の不安を強めることがあり、離職の原因となることも。 また、採用サイトでテレワーク実施を前面に出し過ぎると、就活生に不安を与える可能性もあります。
テレワークのメリットを活かすには、独自にひと工夫を施し、むしろ採用の強みに転ずることが重要です。
黒字も赤字も紙一重。
あなたの会社を動かす、現在のキーパーソンは、一体全体誰なのでしょう?
今日もまた、何も知らない企業人が一人、路地裏に向かってきます。
まずはこの人の現在の悩みを見てみましょう。
【迷走する建設会社の採用担当】実績があるにも拘わらず求人が振わない
今回の主役は、翌年に創業50周年を控えた老舗建設会社に勤務する人事担当者。
この建設会社は、小さな工務店に端を発し、いつしか大手に次ぐポジションにまで上り詰めました。ここ十数年は公共施設建設の受注が急増。業績は右肩上がりです。
前年の年商は200億円を下らず、そればかりか環境配慮型の施工に注力してきたことが認められ、将来性も大いに有望視されています。
しかしこの会社、採用だけが振るいません。
数年前には、古めかしかったコーポレートサイトのリニューアルと同時に採用サイトを独立させ、新卒生を中心に採用を強化してきました。それでも、効果はほとんど実感できなかったといいます。
建設会社のマンパワー不足は死活問題です。おしゃれで少し尖った感じのデザインが自慢の採用サイトは、社内では好評でしたが、就活生のエントリー数は以前とほとんど変わっていないのだとか。
人事担当者は、社長からもっと効果的な施策を打つよう、しばしば発破をかけられています。社長は昔ながらの考え方をする人物で、若い社員がもっと現場の職人さんと意思疎通を図り、生の勉強をすべきだといいます。しかし、社会にはこうした考えとは裏腹な動きがあるのも事実。
長引くコロナ禍の影響でテレワーク推進が急務となるばかりか、働き方改革で育児や介護と業務の両立ができる体制作りもせかされています。
ただ、現場との連携や若手社員との密なコミュニケーションを必要とする建設会社にとっては、現場以外すべてテレワークというわけにも行かず、痛し痒しの現状もあるようです。
今年も就活シーズンが近づいています。しかしこのままでは前年と同様、セミナー参加申し込みをしてきてくれる学生の数は伸び悩むことが危惧されます。
キャリア採用にも力を入れてはいるものの、業界はどこも慢性的な人手不足。そう簡単に人は集まらないといいます。
人事担当者は、もう一度採用サイトを作り直すべきかどうか悩み中。
先日、直属の部下からは、今の学生は就活でWebサイトをフル活用しているため、サイトのコンスタントな見直しが欠かせないと意見されました。しかし、サイト制作会社は星の数ほどあり、依頼先選びにも一苦労です。自社の採用サイトに何が不足しているのかも分析しきれていません。
人事の長として何をすべきなのか、働く世代の減少や働き方改革の波を肌で感じている課長は、ひどい手詰まり感に毎日悩まされています。
迷い込んだ謎深き路地裏で人事課長が出会ったものとは?
採用問題に悩む某建設会社の人事課長は、部下や社長ともっと相談したい気持ちがあるにもかかわらず、日々の業務に追われ、また、コロナ禍でミーティングや会食もままならない日々を過ごしていました。
ある日、一人でショットバーへ出向いて数杯のお酒を飲んだあと、タクシーを拾うために表通りに出た課長。
ところが、不思議なことに、その日はどこまで歩いてもタクシーが通りかかりません。
気が付けば華やかな表通りは途切れ、これまで歩いた記憶のない暗い路地裏が目の前に延びていたのです。
恐ろしくなり踵を返そうとした課長ですが、あやしい路地裏の奥にオレンジ色のあたたかな灯りが滲んでいるのが見え、その灯の正体を知りたい衝動を抑えられなくなりました。
暗くてうすら怖い路地裏を進みオレンジ色の灯に近づいてみると、その味わい深いドアには「OPEN」の文字が、上を見上げると「ザ・ベストフラッグ」と書かれた看板が見えています。
「老舗のバーか何かかな」
課長は恐る恐るそのドアを開けました。
店の中では、課長の訪問を知っていたかのような表情を浮かべた黒縁眼鏡の男が出迎えました。
妙なくすぐったさを感じて床を見下ろすと、課長の足元にはもさもさとした毛並みをたたえた犬が上目遣いで座り、店主に代わって課長に着席を促しています。
課長は、どんなサービスを提供しているのか全くわからないこの店に迷い込んだことを後悔しましたが、目の前の椅子に腰かけている黒縁眼鏡の店主の姿を見たとたん、今抱えている業務の悩みを話したくて仕方がなくなりました。
「自分で言うのも何ですが、弊社はまもなく創業50周年で、知名度も業績も申し分ないと自負しています。
ですが、採用面では常に苦戦している状態です。
高度な施工もできる会社で待遇も良い方だと思いますし、社員からの評価も高いと思います。
そうした特長やメリットを採用サイトでも前面に出していますし、PVはかなり多いんですよね。
でもセミナー申し込みやエントリーにはあまり繋がりません。コロナ禍で今いる若手社員の育成も思うように進まないこともあり、人材不足はどんどん深刻化しそうです」
ひとくさり話し終えた課長の足元を、犬が離れていくのが見えました。その仕草を合図とするように黒縁眼鏡の店主は椅子から立ち上がり、書類庫の中から鮮やかな色の旗を取り出しました。
取り出された旗は先ほどの犬の背に託され、課長の元まで運ばれます。課長は犬の背中に取り付けられたフラッグケースから旗を受け取りました。旗をよく見てみると、その表面には、こんなふうに書いてあるのでした。
「独自のテレワークを進めて採用強化すべし」
「独自のテレワークとは何ですか?」
課長は黒縁眼鏡の男に訊ね、男はこう答えました。
「御社では現場の職人さんや経験豊富な先輩・上司とのコミュニケーションがないと、優秀な社員が育ちにくい。きっと、そうなのですよね。しかし、現代人は企業側に多様な働き方を求めており、テレワークなどの推進も必要不可欠です」
男は一つ咳払いをすると、話を続けます。
「一方で、従来のテレワークではコミュニケーション不足となり、若手のモチベーションが低下します。こうした矛盾を解消するために、御社ならではの工夫を加えたテレワークをお考えになってみてください。現場たたき上げの社長さんのご意見をお聞きになってみてはいかがでしょうか」
課長は、古臭い考え方の社長が画期的なテレワークを発案することなどできるのだろうかといぶかりました。一方で課長は、やけにこの黒縁眼鏡の男の言っていることを試してみたくなっている自分を感じてもいます。
課長がフラッグを受け取って謎のWeb商店を後にしようとすると、店主から呼び止められました。
「テレワーク改革を行う前に、この作戦を決行する上でキーパーソンとなる人の肩にこのフラッグを立ててください。あなた以外にはこのフラッグは見えません。ただし、自社に合う独自のテレワークを推進しないと、御社の今後の採用強化は望めないでしょう」
課長は急に恐ろしくなり、フラッグを握りしめたまま、そのあやしい商店を飛び出したのでした。
頭がかたいはずの社長が提案した「若手社員を孤独にさせない画期的なテレワーク」
不思議なWeb商店で謎の助言を貰った翌日、人事課長は社長室へ出向き、社長が背中を向ける瞬間を狙って、その肩にフラッグを立てました。ただし、Webコンサルの男が助言したとおり、社長がこの件のキーパーソンなのかどうかについてはまだ半信半疑でした。
「社長、働き方の柔軟性を前面に出して新たな採用サイトを作りませんか? 弊社はテレワークを推進していて、デスクワークは自宅で行っても構わないが、若手の育成にも力を入れているということを訴求したいんです。 でも、それって相反することですよね。 テレワークは孤独に陥りやすく、モチベーションダウンに繋がりやすいので……。 社長、何か良いアイデアございませんか」
Webに関する知識をあまり持ち合わせていない社長から、画期的なアイデアなど引き出せるわけがない、と課長は心のどこかで思っていました。しかし、次の瞬間、社長はこう言い出したのです。
「新入社員や若手社員ではなく、中堅以上の社員にテレワークをさせたらどうなんだ? 若い社員の教育係は出社させ、あとの社員はリモートでオッケーにする。 そうすれば、出社した若手は先輩について何でも教えてもらえる。 いわば、バディ型の研修だな。 こうすれば現場にも同伴ですぐに出向くことができるだろう。 現場ともオンラインで同時にコミュニケーションを取れるんじゃない? オフィスは人口密度が低くなるから気分的にリラックスできるだろうし、感染症対策にもなるんじゃないかな」
人事課長は、盲点をつくような社長のアイデアに思わず唸りました。
「社長、そのアイデア、いただきます。 そこに、フリーアドレスなどもプラスして、社長や幹部の皆さんと若手社員が机を並べて仕事ができるようにしてはどうでしょうか。 弊社のフラットなスタイルや若手育成への情熱がサイトを通じて伝わりそうです。 それに、未経験者を歓迎していることのリアリティも伝えることができそうですね」
課長は、早速新たな採用サイト作りのプランを考え始めました。ゆうべ出会った、路地裏のWeb商店にサイト制作の相談をしてみるのも一案かなと思いながら。
その頃、例の路地裏Web商店では、黒縁眼鏡の店主がこんなことを呟いていました。
さて、この会社の採用強化の行方はいかに……