自社の強みがわかっていない社員を嘆く社長のフラッグ

『ザ・ベストフラッグ』エピソード2

このお話の主な登場人物
  • 『ザ・ベストフラッグ』店主 黒縁眼鏡のWebコンサルタント
  • 『ザ・ベストフラッグ』看板フラッグ犬
  • 今回の悩める社長
  • 会社の現キーマンと社員のみなさん

ここは、悩める経営者だけに見える店『ザ・ベストフラッグ』。
人知れず、中小企業経営者に悩み解決のヒントを手渡している、秘密のブログです。

偶然立ち寄ったあなたを待ち受けるのは、会社の収益アップか、社員の成長か、それとも…
いつものように、店主のもとには色とりどりのミッションフラッグが用意されています。

どのフラッグを手渡されるかは、各々の社長の悩みしだい。
さて、今日のフラッグにはこう書いてあります。

目次

「社内の誰かに、さりげなくSWOT分析をやらせてみる」

フラッグを手渡された経営者は、このミッションを遂行しなければなりません。
その前に、SWOT分析とは何かを、おさらいしておきましょう。

SWOT分析とは

自社分析の手法のひとつで、次の4項目の頭文字から成る

  1. S=STRENGTHS=強み(自社が他社よりも勝っているもの)
  2. W=WEEKNESSES=弱み(自社が市場で劣っているもの)
  3. O=OPPORTUNITIES=機会(自社に商機をもたらす世間・市場の動き)
  4. T=THREATS=脅威(自社に損失を与える世間・市場の動き)

自社、競合他社、業界、市場などについて行う分析を「環境分析」と呼び、SWOT分析はその代表格。
自社の強みや弱みを把握することで、効果的な商品開発や営業、マーケティングに活かすのが目的

路地裏では、『ザ・ベストフラッグ』の店主が飼い犬を撫でながら、何かつぶやいているようです。

『SWOT分析など、わざわざやったことがないという中小企業は珍しくありません。改めて自社の強みや弱みを知ることは、マーケティング効果を高める上でたいへん重要なのです。ですが、これまでの雰囲気を覆し、いきなり社長が難しいマーケティング用語を使って、業務として分析を命じるのも、少し的外れですよね』

黒字も赤字も紙一重。

あなたの会社を動かす、現在のキーパーソンははたして誰なのでしょう?
またしても、何も知らない社長が一人、この路地裏へやってきた様子です。

まずは、今回の社長のお悩みから見てみましょう。

ここは、悩める経営者にのみ見える怪しい路地裏

上質な国産自社建材によるリノベーションが話題となり、急成長しかけた工務店の社長。
社員25名のなかの大半を職人が占め、営業職は2人という現状。
そのうちの若手社員が、まったく契約を取れないことに、社長は頭を抱える日々です。

最近は、全国的によく知られた大手ハウスメーカーがリフォーム事業に力を入れており、この街にも小規模ながら支店ができたようで、社長は気が気ではありません。
実際に、同業者からは、大手がブランド力を活かして幅を利かせ始めているという、まことしやかな噂が囁かれています。

こうした劣勢が、できない若手営業マンのモチベーション低下を加速させているという悪循環。
この社員、すでに「契約を取れる気がしない」と周囲に漏らして開き直っているというのですから、手のつけようがありません。

社長はある日の帰り道、もうあの若手社員のことなど諦めて、自ら営業に出ようかと肩を落とし、トボトボと歩いていました。
すると、見慣れたはずの通りの隙間に、見たことのない薄暗い路地裏がとつぜん出現し、思わず社長は目を奪われます。

路地の奥からは、怪しげとも優しげともいえる、不可思議な灯りが社長を呼びよせていました。

不思議な灯りの正体は、不思議なWebコンサル店

路地裏の奥で灯りをともしていたのは、味わい深いたたずまいのWebコンサル店でした。
社長が音を立てて扉を開けると、中には色とりどりのフラッグが所狭しとディスプレイされています。

目の前のテーブルの奥には、黒ぶち眼鏡をかけた店主と、賢そうな飼い犬が待っていました。
社長は促されるまま、店主と向かい合って座ります。

するとそのとたん、社長は堰を切ったように、現在抱えている会社の悩みを話し出したのです。
それは、自分の意志では止めることができない、理不尽なまでの勢いでした。

ひとしきり話を聞いたWebコンサルは、頼まれてもいないのに、目の前に並んだ美しいフラッグを見渡し、どれにしようか悩んでいます。
やがて店主は、なかから1つのフラッグを選ぶと、横で待ち構えていた犬にフラッグを背負わせました。

犬は背負ったフラッグを、テーブルの向こうの社長まで届けると、後ろ足で体を掻いてから戻っていきました。犬が元の場所に戻るのを待ってから、店主がようやく口を開きます。

「社長、このフラッグをお使いになってみてください。もし使い方を間違えたら、私が助けますからご安心を。ただ、注意事項が裏に書いてありますので、必ずそれを守ってください」

社長はわけがわからないまま、そのフラッグの表面に目をやりました。

「社内の誰かに、さりげなくSWOT分析をやらせてみる」


フラッグには確かにそう書かれています。裏に書かれているという注意事項をついでに見ようとすると、

「社長、それはここを出てからご覧ください」
と店主にたしなめられてしまいました。

フラッグを立てる相手? あいつしかいないじゃないか

路地裏を後にすると、社長は早速フラッグの裏側を見てみました。
すると、そこにはこんな恐ろしい注意事項が書いてあったのです。

「SWOT分析を任せる相手の肩に、このフラッグを立ててください。社長以外にはこのフラッグは見えません。ただし、人選を誤ると、悩みが倍増する危険があります。」

人選?

あの使えない若い営業以外にいないじゃないか!あいつがガンなんだぞ。それなのにあいつに賭けろって言うのか…
社長は複雑な気持ちのまま、ワラをもすがる思いで、帰宅後すぐにSWOT分析について調べます。

長く会社の経営者をしていますが、こんなふうに自社を分析する方法があることを知りませんでした。
それにしても、さりげなく自社の強みや弱みを分析させる方法とは…

眠れぬ夜を過ごした翌朝、社長は目の下にクマをつくったまま、寝不足のナチュラルハイな状態で、あの若手営業社員の肩にフラッグを立てました。

「どうかされましたか?社長」

契約が取れていない負い目からか、営業社員は目を泳がせています。

「あ、あのさあ、うちの社の強みを写真に写してSNSにアップしたいんだよ。きみが思うわが社の強みを、写真に撮ってきてくれないか?」

社長は、この社員がSNS好きで、写真の撮り方がムダにうまいという噂を耳にしていたことを思い出し、言葉ではなく写真を使ってみることにしたのです。

「え?なんすか、それ。強みを写真に撮るって、なんすか」
ますます目を泳がせている社員に、社長は「任せる、きみを見込んで任せるよ」とだけ答えました。

「おれを見込んでる?」
営業社員は、ダメ出しばかりされている自分に期待がかけられていることが、にわかには信じられませんでした。

しかし、社長の強い意志だけは感じ取ることができました。

しばらく悩んだ社員は、自社が手がけて好評だったリノベーション物件を1軒ずつ回り、住人が気に入っている細かすぎるポイントばかりを写真に撮らせてもらいました。

わがままな場所に造ったニッチ、国産モザイクタイルを全面に貼りめぐらせた贅沢な洗面台、祖父母が大事にしていた水屋を利用した造りつけの食器棚。
大手には真似できない、細やかな工事がそこにはありました。

営業社員は、肩にフラッグが立っていることも知らず、夢中で「自社の強み」を写真に収めました。これを多くの人に見てほしい、という気持ちが、彼のなかに湧き起こります。

そして、ふと気がつきました。

社長は、これを営業の材料にしろって教えてくれたんだな。怒るのを我慢して、大きなヒントをくれたんだ。なんて人だ。おれは絶対に会社の業績を上げるぞ。大手なんかに負けてたまるか!

肩にフラッグを立てただけなのに自信をつけた社員

営業社員の肩にフラッグを立ててから2週間後、社長が出社してみると、会社のSNSがバズったと社内では大騒ぎになっていました。
社長もすかさずSNSを見てみると、リノベーション物件のディテールばかりが美しい写真となって映り込み、いいねや拡散が止まらない状態に。

例の社員が、問い合わせの電話対応に追われ、生き生きとする姿が見えています。
フラッグを立てる人選は間違っていなかった模様。

同じ頃、誰もいない路地裏に『ザ・ベストフラッグ』店主の声が静かに響きました。

『社長、ナイスフラッグ!でも本題はここからです。おわかりかとは思いますが、写真がバズっただけで何もかもうまくいくほど、ビジネスは甘いものではありませんよね。よろしければ、また、お会いしましょう!』

さて、この会社の行方はいかに。

*このブログのお話は創作です。

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