Web戦略の立て方|社内で共有できる「1枚シート」の作り方(テンプレート付き)

【はじめに】
時間をかけてWeb戦略の資料をつくった。分析も、施策の案も、きちんと書いた。けれども社内ではほとんど読まれず、現場は今までどおり——。そんな経験はないでしょうか。
先に答えを言うと、Web戦略は分厚い資料にするより、「誰に・何を・なぜ当社か・どこで・次の一手」を1枚にまとめたほうが、社内で共有され、実行につながりやすくなります。
この記事では、Web戦略が実行されない理由、1枚シートの5つの項目と書き方、架空の会社の記入例、経営陣への説明と合意の取り方、3ヶ月ごとの見直し方を紹介します。記事の最後に、そのまま使えるテンプレートも用意しています。
- Web戦略が実行されない3つの理由
- 1枚シートの5項目と、それぞれの書き方のコツ
- 架空のBtoB製造業での記入例
- 経営陣に5分で説明し、合意を取る方法
- 3ヶ月ごとに見直すポイント
- テンプレート(Word)のダウンロード
Web戦略が実行されない理由は「形」にある
Web戦略が実行されないとき、原因は中身の良し悪しより、形にあることがあります。
- 読まれない:数十ページの資料は、忙しい経営者や営業担当者には読み切れません。
- 覚えられない:大事なことが多すぎると、結局どれも頭に残りません。
- 判断に使えない:施策が並んでいても、優先順位がなければ、日々の判断の役に立ちません。
戦略は、社内の人が「何をやるか」「何をやらないか」を判断するときに使えて、初めて意味を持ちます。そのためには、誰でも手元に置いて、すぐに見返せる形であることが大切です。
トヨタには、問題・分析・対策・実行計画を、A3サイズの紙1枚にまとめる「A3レポート」という手法があります。
米国のLean Enterprise Instituteも、トヨタが生み出した手法として紹介しています。
1枚に収めようとすると、書くことを選ばなければなりません。何を書き、何を書かないかを選ぶ過程そのものが、考えを整理する作業になります。Web戦略の1枚シートも、同じ考え方です。
1枚シートの5項目

1枚シートには、次の5つを書きます。上から順に決めていくと、自然に「次の一手」までたどり着けます。
| 項目 | 書くこと | 書き方のコツ | よくある失敗 |
|---|---|---|---|
| ①誰に | どんな会社・人の、どんな悩みに応えるか | 業種・規模・役職・状況まで具体的に。「困っている場面」で書く | 「中小企業全般」など、広すぎる |
| ②何を | お客様にとって、どんな変化を届けるか | 商品名ではなく、使った後の状態で書く | 商品やサービスの一覧になっている |
| ③なぜ当社か | 比べられる相手と、その違い | 根拠(実績・数字・お客様の言葉)を添える | 「品質」「丁寧」など、どの会社でも言えること |
| ④どこで | お客様とどこで出会い、どこで信頼し、どこで問い合わせるか | 検索・SNS・展示会・紹介など、出会いから問い合わせまでの道筋で書く | ホームページのことだけを書いている |
| ⑤次の一手 | 今期(3ヶ月)やることと、やらないこと | やることは3つまで。確かめる数字を1つ添える | やることが10個以上並んでいる |
書く順番のコツ
いちばん時間がかかるのは、③の「なぜ当社か」です。社内で話し合っても言葉にならないときは、既存のお客様に「なぜ当社を選んだのか」を聞くと、伝わる言葉が見つかりやすくなります。
④の「どこで」は、ホームページだけでなく、展示会や紹介など、Web以外の接点も書いて構いません。お客様との接点の全体像の中で、Webの役割を決めるためです。
Webの役割そのものを先に決めたい場合は、[WEBは営業か?広報か?社長が最初に決めるべきWEBの役割]も参考にしてください。
記入例(架空のBtoB製造業)

架空の会社を例に、5項目を埋めてみます(会社名・内容はすべて説明のための架空のもので、実在の企業とは関係ありません)。
| 項目 | 記入例:樹脂成形のA社(社員20名・架空) |
|---|---|
| ①誰に | 新しい樹脂製品の開発を進めている、日用品・雑貨メーカーの企画・開発担当者(量産用の金型をつくる前に、形や使い勝手を確かめたい人) |
| ②何を | 金型をつくる前に試作で形と使い勝手を確かめられ、そのまま量産まで同じ窓口で相談できる安心 |
| ③なぜ当社か | 比べられる相手は、量産の成形だけを請け負う成形会社。 A社は試作から金型の設計、量産まで社内で対応でき、試作の段階で量産時の課題(反りやコストなど)を提案できる。根拠:試作から量産まで社内で一貫して対応した実績 |
| ④どこで | 開発担当者は「樹脂 試作 小ロット」などで検索して候補を探す→サイトの事例ページで対応力を確かめる→図面や画像を添付できる相談フォームから問い合わせる。 展示会で名刺交換した相手には、事例ページを案内する |
| ⑤次の一手 | 【やる】試作から量産までの事例ページを3本つくる/相談フォームに図面・画像の添付欄をつける/展示会後のフォローメールに事例ページを入れる 【やらない】今期はSNS広告を出さない 【確かめる数字】事例ページ経由の問い合わせ件数 |
⑤の「やらない」を書くのがポイントです。やらないことが書いてあると、途中で新しい施策の話が出たときに、「それは今期はやらないと決めた」と立ち返ることができます。
経営陣への説明と合意の取り方
1枚シートができたら、経営陣に説明して合意を取ります。説明は5分で十分です。
資料は1枚だけ。補足の資料は聞かれたら出す
「今期は、この3つをやります」と、⑤の次の一手から伝える
①誰に・③なぜ当社か、から、なぜその3つなのかを説明する
何をやらないかを明確にし、予算と人手を集中させることを伝える
「この3つで進めてよいか」など、その場で判断してほしいことを1つに絞る
反対意見が出たときは、「5項目のうち、どこに違和感がありますか」と聞いてみてください。
1枚にまとまっていると、議論が「全体として何となく反対」ではなく、「③の比べる相手が違うのでは」というように、具体的になります。
DPDのWEB戦略設計コンサルティングが3ヶ月の伴走のゴールに掲げているのも、「社内で『次の一手』を発表できる状態へ」です。整理した方向性は、社内で共有しやすい「簡易戦略資料」にまとめます。
DPDの「WEB戦略設計コンサルティング(3ヶ月集中)」では、現状課題の整理から、強み・ターゲット・Web活用の方向性・実行の優先順位までを、キーマンの方と一緒に3ヶ月で整理します。自社だけでは③の「なぜ当社か」が決めきれない、という段階からご相談いただけます。
3ヶ月ごとに見直すポイント
1枚シートは、つくって終わりではありません。3ヶ月ごとに、次の3点を見直します。
- 次の一手の結果:添えた数字はどう動いたか。やったこと・やれなかったことは何か
- 言葉が通じたか:①誰に・③なぜ当社か、の言葉は、営業の現場やお客様に通じたか
- やらないことを守れたか:途中で施策が増えていないか。増えたなら、その理由は何か

見直したら、シートに日付と版(第1版、第2版……)を書き、変えた理由を1行残しておきます。半年後に読み返したとき、「なぜこう決めたのか」をたどれるようになります。
テンプレートのダウンロード
この記事で紹介した1枚シートを、Wordのテンプレートにしました。
1枚目が記入用の空欄シート、2枚目がこの記事の記入例(架空の会社)です。印刷して手書きで使うことも、パソコンで直接入力することもできます。
よくある質問
- どうしても1枚に収まりません。
-
収まらないのは、まだ決めきれていないことがあるサインかもしれません。
とくに⑤の「次の一手」が多くなりがちです。
今期やることを3つまでに絞り、残りは「やらない」か「次の3ヶ月で検討」に分けてみてください。 - 誰が書くべきですか?
-
下書きは、Web担当者や営業責任者など、現場を知っている人が書くのがおすすめです。
ただし、決めるのは経営者です。下書きの段階から、経営・営業・現場のキーマンに意見をもらっておくと、合意が取りやすくなります。 - 事業が複数ある場合は、どうすればいいですか?
-
事業ごとに1枚つくるのがおすすめです。
「誰に」や「なぜ当社か」は、事業によって変わるからです。
会社全体では、今期どの事業のWebに力を入れるかを決めておきます。 - 目標の数字は、どこに書けばいいですか?
-
⑤の「次の一手」の欄に、確かめる数字を1つ添えます。
数字の決め方は、受注目標から商談・問い合わせ・訪問へと逆算する方法がおすすめです。 - Web以外の施策も書いてよいですか?
-
書いてください。
お客様との接点は、Webだけではありません。展示会や紹介、営業の訪問も含めて書くことで、その中でWebが担う役割がはっきりします。
まとめ
- Web戦略が実行されない理由は、中身より「共有できない形」にあることがある
- 1枚シートの5項目は「誰に・何を・なぜ当社か・どこで・次の一手」
- 次の一手は3つまで。「やらないこと」と確かめる数字も書く
- 経営陣には、1枚を配り、結論から5分で説明し、決めてほしいことを1つに絞る
- 3ヶ月ごとに見直し、版と変えた理由を残す
DPDは、単なる制作会社でも、単なるアドバイス専門のコンサルでもなく、目標達成に向けて伴走するWebコンサルです。方向性を社内で共有しやすい「簡易戦略資料」にまとめ、社内で「次の一手」を発表できる状態まで、3ヶ月で伴走します。
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松口 賢士(まつぐち けんじ)
Duo Partner Design合同会社 代表社員/Webコンサルタント・デザイナー
フリーランスのデザイナーとしてサインデザインに携わり、その後デザイン会社を経営しながら、さまざまな会社のブランディングを手伝ってきた。
100名規模の企業でブランディング事業部長を務めた時期には、複数の事業でWebやマーケティング、採用に関わり、多くのことを学んだ。
現在は「コンサルティングから始めるWeb制作」を掲げ、中小企業の経営とWebをつなぐ伴走支援を行っている。
専門学校や職業訓練校でWeb分野の講師も務める。
参考資料
- Lean Enterprise Institute「A3 Report」
https://www.lean.org/lexicon-terms/a3-report/

