仕方なくやっていた環境活動が自社の財産であることに気づいた部長のフラッグ
・『ザ・ベストフラッグ』店主 黒縁眼鏡のWebコンサルタント
・『ザ・ベストフラッグ』看板フラッグ犬
・今回の悩める企業人
・会社の現キーマンと社員のみなさん
*このブログのお話は創作です
ここは、悩める経営者だけに見える店『ザ・ベストフラッグ』。
人知れず、中小企業経営者・役職者に悩み解決のヒントを手渡している、秘密のブログです。
偶然立ち寄ったあなたを待ち受けるのは、会社のちょっとした取り組みを事業ブランディングに活用するためのアイデアかそれとも…
今日も店主のもとには、色とりどりのミッションフラッグが用意されています。
どのフラッグを手渡されるかは、それぞれの企業人の悩みしだい。
どうやら、今日のフラッグにはこう書いてあるようです。
「思い切ってサーキュラーエコノミー体質の企業になる」
フラッグを手渡された人は、このミッションを遂行しなければなりません。
それにしても「サーキュラーエコノミー体質になる」とはどういうことなのでしょうか?
まずはこの「サーキュラーエコノミー」とは何かをおさらいしておきましょう。
サーキュラーエコノミーとは廃棄物や汚染物を排出しない経済システムのことで、「循環型経済」を意味する。3つのR(Reduse・Reuse・Recycle)と似通った印象を受けるが、3Rは廃棄物の処理に関する考え方を指す。一方のサーキュラーエコノミーは、極限まで廃棄物をなくす仕組みづくりと言い換えられる。原材料などの価値を保持しながら使い続け、自然再生をテーマとしているのがサーキュラーエコノミーといえよう。
今、べスフラ店内で、店主はこんなことをつぶやいています。
限られたリサイクル活動だけでは、環境面での社会貢献にも限界があります。これからの製造業・販売業に求められるのはサーキュラーエコノミー。極限まで廃棄物や汚染物をなくしていこうという取り組みです。ただし、御社がこれまで頑張ってきた活動の中にもサーキュラーエコノミーを実践するためのお宝が眠っているかもしれませんよ。
黒字も赤字も紙一重。
あなたの会社を動かす現在の<キーパーソン>は、一体全体誰なのでしょう?
今日もまた、何も知らない企業人が一人、路地裏に向かってきます。
まずはこの人の現在の悩みを見てみましょう。
経営陣の「もったいない」「地域に還元を」を煩わしく感じていた商品企画部長
今回お悩みなのは、寝具や生活用品を開発・販売している会社の企画本部長。会社は創業60年、従業員数1000人を超える中堅企業です。
この会社の経営陣は全員がいわば「昭和世代」。会社の周囲のゴミ拾いや、不要となった寝具の回収などの地域ボランティアや環境活動を何十年も前から行い、若手社員にも「世のため人のためになることをすべき」と日頃から声をかけて歩いています。
さらに最近では、世の中のSDGsに対する意識の高まりや脱炭素の必要性が声高に叫ばれるようになったことを受け、「もっと環境に優しい取り組みを」「もったいないという意識を社員一人一人がさらに持つように」と迫ってきます。
企画本部長は「おっしゃることはわかる。正しいと思う。けどね、こういう活動って結果的に業務評価に繋がらないので業務の押しつけになってしまう。特に若い社員は不満に思うよね。」と常々思っていました。
ある意味事業の本筋に関係ない環境奉仕作業を強いるのは、ちょっと……と内心反発を覚えていたのです。
経営陣が望んでいることは「きれいごと」であって、事業促進とボランティア的活動が両立できるとは、部長には思えませんでした。
新たなエシカル商品を企画するも頓挫。悩む部長の目の前にアヤしい路地裏の商店現る
しかし、その状況下で容赦なく要望を述べてきたのが副社長。
「今当社が販売している環境配慮型の商品は、最新の技術を使っているから価格が高すぎて富裕層がターゲット層になってしまっているよね。もう少し別の切り口で環境保全活動に貢献できるサービスを行えないないものかね」
こんな副社長のムチャぶりに対し、企画本部長は正直いらいら。
『いつも僕たちに丸投げ。会社の利益を考えながら環境活動にも力を入れるなんて、そんなことが簡単にできれば誰も苦労しないよ』と歯噛みしました。
そもそも、これまでもさんざんアイデア出しを繰り返してきた企画本部内には手詰まり感が強く漂っていました。一方で、経営陣からの要望には応える必要があります。
部内会議を重ねた結果、企画本部長は環境配慮型の新素材を使い、なおかつベビー布団を子供が大きくなってからも使える仕様にデザインすることで長く使用でき、なおかつ環境に優しい素材を配合させて売り出すことを決めました。
環境配慮型の新素材は次々開発されており、他会社とのコラボレーションは十分可能です。
しかし、素材探しの段階から費用面でのハードルの高さが判明。
結果的に開発を企画していた新商品の単価は、どう考えても富裕層向けの水準となってしまうことがわかりました。「富裕層ターゲットの商品はもういい。」副社長の言葉が、本部長の脳裏をよぎります。
経営陣が納得してくれるような、「社会や人の役に立っている感じがする新商品」は、どうしたら開発できるのか。今日も眠れそうにありません。
酔って眠れたらいいですが、お酒が飲めない部長は、夜遅くまで開いているカフェでさまざまな同業他社の環境配慮型人気商品をリサーチしていました。
カフェの閉店時間となったため店を出て地下鉄の駅まで歩いていましたが、なぜかどれだけ歩いても地下鉄の駅に辿り着きません。
恐怖を感じていると、ふと目の前に見たこともないような路地裏が立ち現れ、部長は驚いて何歩か後ずさりしました。
「なにこれ。こんな道あったっけ」
目を凝らして見てみると、その路地裏の突き当たりにはやわらかなオレンジ色の灯りが見えています。
「おしゃれな雰囲気だな。深夜カフェか何かかな?」
オレンジの灯りに吸い込まれるように路地裏に入っていく部長。先ほどのオレンジの灯りの主は「ザ・ベストフラッグ」という看板が掲げられた謎の商店でした。
部長はその扉を開けてみたい衝動にどうしても逆らえなくなり、そっとその趣深い戸を開けてみました。
店の中はヴィンテージ感溢れるテーブルやキャビネットが配されたウッディな空間でした。目の前のテーブルには、黒縁眼鏡をかけ膝に小型犬をのせたスーツ姿の男が悠然と座っています。
「いらっしゃいませ。まあ、どうぞおかけください」
どうやら商店主らしい黒縁眼鏡の男は、まるで本部長の来店を知っていたかのような雰囲気で彼に座るよう促しました。
「宝の持ち腐れだったじゃん!」部長のアイデア炸裂
路地裏の怪しい商店で黒縁眼鏡の男と向かい合って座った部長。
男の目を見ているとなぜか突如として猛烈に今の自分の悩みを打ち明けたくなり、気が付けば夢中になってこれまでの経緯を話していました。
黙って話を聞いていた商店主は、ひとしきり話し終えた部長の目を見つめながら何かを考えているようです。
商店主は徐に立ち上がると、店の奥の部屋から一本のフラッグを持ってきて、毛並みのもさもさとした小型犬を呼び寄せました。
よく見てみると、小型犬は背中にフラッグを挿し入れることができるようデザインされたハーネスを身に着けています。
部長は犬が運んできたフラッグを受け取ると、その表面に書かれた文字に目を見張りました。
「思い切ってサーキュラーエコノミー体質の企業になる」
目を丸くしている部長の耳に、商店主の穏やかな声が聞こえてきました。
「部長、フラッグの使い方をご説明します。そのミッションを遂行すべきキーパーソンを見極め、その人の肩にフラッグを立ててください。注意事項が裏に書いてあります。店を出てからご確認ください」
不思議な気持ちになりつつも頷いた部長は、フラッグを握り締めて商店を後にし、路地裏を走って戻りました。
ようやく自宅に辿り着き、指示どおりフラッグの裏側を見て見ると、このような忠告がしたためられています。
「部長以外にはこのフラッグは見えませんのでご安心を。ただしキーパーソン選びを誤ると、経営陣の思いを汲むことはできないままこの先も進んでいかなくてはなりませんよ」
恐ろしくなった部長。
いったい俺にどうしろっていうんだ。
サーキュラーエコノミーという言葉は聞いたことがありましたが、実態はよく知りません。さて、思いがけず大きな決断を迫られることになった企画本部長はは、この難題にどう立ち向かうのでしょうか。
これまで名前のなかった数々の環境活動が一つずつきらめきだして…
サーキュラーエコノミーについて調べ尽くした部長は、今回のミッションのキーパーソンを自分自身に決めました。キーパーソンを決定する前に、次々とアイデアをひらめきだしたことから、間違いなくこのミッションの実行者は自分であると思ったのです。
部長は、巨額の費用をかけて新たなエコ商品を開発することをやめました。
その代わり、部長がこれまで「うっとうしい」「きれいごとだ」と感じていた社を挙げての奉仕活動や環境対策サービスを、正式に会社のアピールポイントとして採用することにしたのです。
もともとあるものを活用するとは、これこそまさしくエコな考えといえるのではないでしょうか。
方向性を決めた部長は、企画部内で何度も会議を重ね、これまで地道に続けてきた地域のゴミ拾い活動や使用済み寝具の回収サービスなどに新たに名前をつけるべく社内公募を行うと同時に、企画部内に環境活動全体をプロデュースする部門を発足。
やがて社内公募を経て活動内容が具体化し、回収した寝具を非常時用にリペアして地域の避難所に配る活動を開始することを決定しました。
また、寝具の製造過程で排出される繊維クズを集めてアップサイクルし、フェルト素材のバッグやファッション小物に作り替える事業も立ち上げることに。
このような活動を若手社員がSNSにアップしたり、ホームページに掲載したりしていくうち、外部から取材依頼も舞い込むようになりました。
SNS上で若手社員がいきいきとアップサイクルプロダクトを紹介する姿には多くの反響が寄せられ、求人サイトの閲覧数がうなぎ上りに上昇したことも、部長にとっては望外の喜びでした。もちろん、もっと地域や社会のために役立ちたいと考えていた経営陣も大喜びです。
きれいごとだと思っていたけれど、経営陣の志は多くの人の心を動かす大切なテーマであり、企業としての信頼度や関心を高める重要な要素であると気づいた部長。
あの路地裏のWebコンサルは、遠くからこの会社の様子を眺めながらこう呟いています。